ドッグトレーナーの上石です。

今回は、私自身の経験を交えながら「ペットロス」についてお話しさせていただきます。
大切な家族である愛犬との別れは、想像を超える悲しみや喪失感を伴います。
この記事が、少しでも同じ経験をされた方の心に寄り添えるものとなれば幸いです。

◆ペットロスとは

「ペットロス」とは、ペットとの死別などがきっかけとなって発症する精神的・身体的な不調を指します。症状は人それぞれですが、うつ状態、不眠、食欲不振など、深刻なケースでは摂食障害や強い無気力感に陥ることもあります。

近年、犬と人間の関係性は大きく変化しています。
かつては番犬や家畜といった“使役動物”としての役割が中心でしたが、今はほとんどの飼い主が「犬は家族の一員」と考えていらっしゃるのではないでしょうか。

そうした背景からペットロスは決して特別なものではなく、愛犬との距離が近くなった現代だからこそ多くの人に起こりうる自然な反応だと私は考えています。

◆ 私自身の経験

私も2017年に愛犬を亡くしました。その時に最も強く感じたのは「罪悪感」でした。

「もっとできることがあったのではないか…」
「もっと一緒に過ごしてあげればよかった」

そんな後悔や自責の念に押しつぶされそうになりました。
当時はトレーナーとして仕事が忙しく、実家を離れていたため、なかなか会いに帰ることができていませんでした。
亡くなったという知らせを受けた時の衝撃は今でも鮮明に覚えています。

私の場合は、時間が少しずつ気持ちを癒してくれました。たくさん泣き、心の中で愛犬に何度も謝りました。そして、少しずつ心が軽くなり今では家族と一緒に思い出話を笑顔でできるようになりました。

もし、今まさに愛犬を亡くし、深い悲しみに沈まれている方がいらっしゃるなら私はお伝えしたいです。

感情に正直になること、思いきり泣くこと、悲しみを否定せずに受け入れることも心の回復にはとても大切だと私は思います。

◆ 愛犬の生前にできること

犬の寿命は人間よりもずっと短く、多くの場合、飼い主が愛犬を看取る立場になります。言い換えれば
見送るまでが飼い主としての責任」とも言えるでしょう。

できるだけ後悔を残さないために、生前からできることをお伝えします。

定期的に動物病院を受診し、年に一度は血液検査を受けることをおすすめします。
血液にはたくさんの情報が詰まっており、病気の早期発見にもつながります。

高価なフードである必要はありませんが、原材料や添加物について最低限の知識を持ち、適切なフードを選んであげることが健康寿命を延ばすことにもつながります。

愛犬との心の距離感も大切です。可愛さゆえについ“人間扱い”してしまうこともありますが、それが必ずしも犬のためになるとは限りません。

例えば「美味しいから」と人間の食べ物を与えすぎてしまうと、塩分過多消化不良の原因になってしまいます。
犬には犬としての生き方があり、その中で最大限の愛情を注ぐことが本当の意味での「愛すること」だと私は思います。

そうした意識を持つことが、結果的にペットロスの予防にもつながります。

◆ 愛犬が亡くなった後の過ごし方

それでも、どれだけ準備していても、愛犬との別れは本当につらいものです。
深い悲しみ、ぽっかりと空いた心の穴…それは決して「弱さ」ではなく、ごく自然な感情です。

そんなときは無理に元気になろうとせず信頼できる人や家族に思いを話すことをおすすめします。言葉にすることで心が少し軽くなることもあります。

私も、家族と定期的に愛犬の思い出話をしています。
思い出が悲しみだけでなく、やさしさや温かさに変わっていくのを感じています。

◆ ペットロスの方に寄り添うには

もし、周りにペットロスで苦しんでいる方がいた場合、無理に慰めたり「新しい犬を迎えては?」と勧めたりするのは控えてください。

大切なのは「話を聞いてあげること」。
ただ静かに耳を傾け、相手が感情を吐き出すことを受け入れてあげてください。それだけでも大きな支えになります。

◆最後に

いかがでしたでしょうか。
私自身の経験からも、愛犬を失うということは本当に言葉にできないほど辛いものです。

けれども日頃からペットロスに関する知識を持ち、しつけや食事、健康に配慮しながら愛犬と向き合うことで
あの子のためにできることはやり切った」と、自分自身を納得させられる日が必ずきます。

愛犬と過ごす時間には限りがあります。
その時間を悔いなく愛情を持って過ごすことが何よりも大切です。

みなさんが愛犬とのかけがえのない日々を後悔なく過ごせることを心から願っています。
そのためのお手伝いとして、私たちの「しつけ」が少しでもお役に立てれば幸いです。

◆ 関連記事ブログ → ターミナルケアについて

上石 圭一郎

京都市伏見区 GINGA代表


大阪府の訓練施設で訓練技術を学んだ後、長野県のペットサロンでしつけ部門の責任者として経験を積みました。その後、地元である京都府でDogTrainingGINGAを開業いたしました。
社名にもなっているGINGA(銀牙)は私が子供の頃を共に過ごした愛犬の名前です。当時は私もまだ幼く、しつけの知識がありませんでした。
技術や知識が身についた今、振り返ると銀牙にしてあげられなかった事がたくさんあり後悔する事も多々あります。
今、愛犬と共に過ごす飼い主様が私と同じ思いをしないよう、後悔なく愛犬と共に過ごせるように精一杯サポートさせていただきたいと思います。

上石 圭一郎